Web制作契約書に関わる規定まとめ
2017/06/08   契約法務, 民法・商法

はじめに

IT技術の発達が目覚しい近年では、企業のWeb上での情報発信は常識になっています。Webの制作について外部の会社に委託する会社も多いかと思いますが、今回はWeb制作に関わる契約書の規定についてまとめていきます。

契約の類型について

●請負と委任
Webに関する業務を委託する場合、その内容は様々です。Webの構築を依頼する場合や、ページプレビュー数を増やす、売上保証を伴わないコンサルティング等多様です。そのため、契約類型を特定することは難しいですが、多くは委任契約又は請負契約です。請負が結果にフォーカスするのに対して、委任は業務の遂行にフォーカスします。Webサイトの構築という結果を約する場合には請負、売上保証を伴わないコンサルティングは委任、といった具合です。
●委任と請負に関する民法上の規律
そのため、Web制作に関して契約を結ぶ際には委任契約と請負契約に関する規律はチェックしておきましょう。私法上では契約自由の原則のもと、基本的には法律より契約書の定めが優先します。ただ、契約書に定めのない事項については法律に定められたルールが適用されます。請負に関しては民法632条以下、委任については643条以下の定めをチェックしておきましょう。以下では、民法の関連条文についても適宜参照していきます。

規定内容について

以下では、具体的な規定についてみていきます。
●目的規定
当事者が何についてどのような取引をするのかを明確にするための規定です。契約の趣旨や、権利義務の概略を総論的に記載する規定なので、訓示的な側面が強い場合が多いです。ただし、契約に定めのない事柄が問題になった場合に、目的規定から契約の趣旨を解釈する場合があります。
●定義条項
契約書における文言の解釈について争いが生じる可能性のある場合に用語の定義を記しておく規定です。Web制作では技術用語が頻繁に使われ、制作会社とクライアントとの間で、用語についての認識で齟齬が生じるおそれがあります。例えば「SEO対策」とは何なのか、後に争いを生じさせないためにも明確にしておくと良いです。
●委託内容に関する規定
・委託内容、仕様について
契約の対象となる、Web制作業務の内容をしっかりと記載していきましょう。Web制作と一口に言っても様々な業務が有り得ます。各契約ごとに、委託する内容を明確に定めましょう。例えば、ホームページ作成業務、SEO対策、コンテンツの更新、不具合の修正等、どの部分の業務の委託がなされるのかを記載していきます。内容が多ければ、別紙として仕様書を作成しましょう。
・再委託について
再委託の可否について定めます。再委託を許す場合には、再委託先に委託先と同様の義務を負わせる旨、義務違反があれば委託先が連帯責任を負う旨を定めておく方法も考えられます。
・秘密保持
Web制作はクライアントが提供するサービスを理解しなければ、効果的な集客は行えません。それゆえ、必然的にクライアントの秘密情報に触れることも多いかと思います。そのため、クライアントの秘密を漏らさない旨を定めておきます。別途に秘密保持契約書を作成することも考えられます。
・受任者による報告義務
Web制作を受任した者が、必要に応じてクライアントに報告を行うことを明記します。民法上では委任について民法644条に規定があります。
・通知義務
業務遂行上重要な項目について変更などが生じた場合には双方が通知義務を負う旨を定めます。
●債務不履行等
・損害賠償規定
契約上の義務の不履行や、不法行為によって損害が生じた場合に、損賠の賠償を求める規定です。不可抗力による損害発生時の免責、違約金、損害賠償の予定を定める場合もあります。規定を置かない場合について民法415条、709条を参照しておきましょう。
・契約解除
相手方の義務不履行等があった場合に契約を消滅させることを認める規定です。定めを置かない場合には委任についての民法651条と650条、請負についての641条と642条をチェックしましょう。また、民法540条以下に総則的な規定があります。
・期限の利益の喪失
例えば破産手続きの開始など、一定の事由が生じた時に、期限の利益を失わせる規定です。民法では137条に規定があります。
●料金についての定め
・制作料金について
制作料金がいくらなのか、消費税を含むのかどうか、等定めていきます。委任に関する民法648条1項は、特約ない限り報酬請求できないと定めているので、確実に記載してく必要があります。見積書を作成するのもいいでしょう。他方、請負については報酬の支払いを約することが契約の成立要件とされています(民法632条)。
・支払い方法について
銀行振込みなど、支払い方法について定めます。民法では484条で債権者の住所地で支払うものと定めらています。
・諸費用について
業務遂行上生じる諸費用をいずれが負担するのかを明記します。民法485条では義務の履行者が費用を負担することとなっています。また、委任について民法649条、650条も確認してください。
・支払い手数料の負担
銀行振り込みでの支払いの場合には、手数料をいずれが負担するのか、という点も規定しておきます。定めの無い場合には民法485条によることになり、債務者である依頼人が負担することになります。
・支払期日
いつまでに制作料金を支払うのかを定めておきます。委託者がきちんと期日までに料金を支払ってくれるように、遅延損害金についても明記しておくと良いでしょう。民法上では委任に関して648条2項、請負に関しては633条を参照してください。
●納品について
・納品方法
CD-ROMでの納品、FTPデータをアップロードして公開できる状態にすることで納品する方法などが考えられます。
・検査
納品されたものが委託された仕様と合致しているのか検査していきます。そのために、納品後検査する旨を定め、検査期間、検査結果の通知方法等を明記しておきましょう。
・公開日
Webサイトを公開する時期を定めます。支払いを先履行とするか、公開を先履行とするか等を定めておきましょう。
●権利の帰属について
・権利移転時期
画像や文章等の著作権、知的財産権がどのタイミングで制作側からクライアントに移転するのかを定めます。委託料の支払い時に移転するなどの内容が考えられます。
・危険負担について
成果物について第三者の著作権・知的財産権との関係で争いを生じることが有り得ます。そこで、制作物により第三者と争いが生じた場合の対応策を規定しておきます。
●検査完了後
・制作物の再制作
納品後の依頼主都合による再制作についての規定です。通常は依頼主が追加で費用を負担することになると思われます。
・瑕疵担保責任
サイトに初期不良などの原始的で隠れた瑕疵がある場合には、制作側において無料で修正する旨の規定です。当事者としては合意した仕様のサイトの引渡しを想定してるので当然の規定といえます。ただし、権利移転時ないし検査時からのどれくらいの期間で責任を負うのかを定めておきましょう。民法上の規定としては、請負に関しての634条以下、総則的規定である570条を確認しておきましょう。
●契約期間
・規定内容について
契約の存続期間について定めるものです。Web制作業務は多岐にわたるので、業務内容ごとにいつまで契約を存続させるのか考える必要があります。ホームページ作成業務を委託するだけであれば作成完了段階で契約を終了とする、制作後の管理まで委託する場合には作成後1年を契約期間とし、自動更新する旨を定めておくなど、様々な方法が考えられます。業務内容に合わせて契約期間を設定しましょう。
・民法上の規律について
契約期間の民法では140条以下に期間についての定めがあるので確認して下さい。また、委任の終了(653条以下)も参照してください。
●その他一般条項
その他、契約書一般に定めるべき事項について確認しておきましょう。例えば、協議条項、管轄規定、反社会勢力排除などです。

民法
請負契約と委任契約の違い
ホームページ制作業務委託契約書雛形(PDFファイル)
Web制作会社必見!損しないWeb制作業務委託契約書のつくり方(ベリーベスト法律事務所)
契約書に必要な法的知識まとめ

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