フランチャイズ契約における競業禁止規定に関する判例まとめ
2020/01/29   契約法務, フランチャイズ, 民法・商法

1、はじめに

昨今、フランチャイズ契約が各業界で幅広く行われるようになってきました。
しかし、フランチャイズ契約において競業禁止に関する事例を目にすることもあるかと思います。
そこで、今回は、フランチャイズ契約の競業禁止規定に関してどのような事例があり、どのような判断がなされているのか考える素材として、フランチャイズ契約に関する判例をまとめました。

2、フランチャイズとは

フランチャイズ本部(フランチャイザー)が
加盟店(フランチャイジー)に対して、
商標・商号の使用権、商品やサービスの販売権、
それに伴う経営ノウハウの指導・教育などを提供し、
その対価として、加盟店から保証金やロイヤリティなどの
対価を得るシステムのこと
⦅引用元:マイナビ独立フランチャイズ
をいいます。

3、名古屋地裁平成17年1月25日

<事案>
原告らは、たこ焼き専門店の被告会社と加盟店契約を締結していた。
しかし、原告らは契約締結に際して、被告会社担当者が売上予測等に関し虚偽の事実を告げるという詐欺行為があったことにより損害を被ったと主張し、被告会社に対し、損害賠償を求めた(甲事件:損害賠償請求)。
これに対して、被告会社が原告らに、上記契約終了後に原告が営業行為をしていたとして、損害賠償等を求めた(乙事件:営業禁止等請求)事案。
【注】甲事件の原告らの主張は全面的に認められませんでした。
■裁判結果
(甲事件)請求棄却
【上訴関係不明】
(乙事件)一部認容・一部棄却 
<主な争点>
(乙事件:争点1)
原告らへの商標等使用禁止請求は認められるか。
(乙事件:争点2)
契約終了後の営業行為が
「加盟店契約終了後1年間は同一の場所においてたこ焼店及びそれに類似する店舗の営業をしてはならない」旨の競業禁止条項に違反したことを根拠とする損害賠償請求は認められるか。
<判断>
(乙事件:判断1)
確かに、原告らは被告会社から購入した鉄板を用いて、営業を継続している。しかし、原告らは店名を変え、被告会社の商標・名称等を全て削除する等の措置を採っている。また、被告会社主張の『フランチャイズ営業権』自体不明確な権利である。そのため、かかる商標等使用差止請求は認められない。
(乙事件:判断2)
原告らの同一の場所でのたこ焼き店営業行為が競業禁止条項に触れることは明らかである。また上記競業禁止条項はフランチャイズ契約としてはそれなりに合理性があるといえる。そのため、被告主張の請求は認められる。

4、東京地裁平成17年1月25日

<事案>
弁当宅配業のフランチャイザー(原告)が、フランチャイジーであった被告Y及びその連帯保証人であった被告Zに対して、被告Yがフランチャイズ契約(以下、「本件契約」)所定の契約終了後の競業避止義務に違反したことを理由として、同一市内において同種の営業を行わないこと(営業差止請求)と約定の損害金の支払い(損賠償請求)を求めた事案。
<主な争点>
(争点1)
原告の本件解約を解除する旨の意思表示は有効か
(=被告等に原告との間の信頼関係を破壊する債務不履行があったか)
(争点2)
原告と被告Yとの間の本件契約が解除された場合、被告Zは競業避止義務を負うか。
<判断>
一部認容・一部棄却(後に和解)
(判断1)
フランチャイズ契約のような継続的取引契約を終了させるためには、解除原因について同契約の基礎である信頼関係を破壊するに至る程度の合理的な理由があることが必要。
本件では、原告からの度重なる保証金、食材代、委託料等の請求があったにもかかわらず、被告は債務不履行を繰り返しており、信頼関係を破壊する合理的な理由あると判断した。
(判断2)
本件契約の競業避止義務条項はフランチャイジーの営業の自由を不当に制限するものではないので有効。そして、同条の趣旨及び被告等の事情からすると、信義則上、被告Zも競業避止義務を負う。

5、東京地裁平成21年3月9日

<事案>
フランチャイザー(原告)が、フランチャイジーであるA社を吸収合併した被告C・E社らに対し、フランチャイズ契約上の債務の不履行を理由に、損害賠償を求めた。
反対に、被告が原告に対し、原告が提供すべき債務の不履行があったとして、預託済みの保証金の支払等を求めた事案。
なお、本件におけるフランチャイズ契約の内容はフランチャイザーがフランチャイジーに対し、一定の地域内で、
フランチャイザーの商標、サービス・マーク及びトレード・ネーム等営業の象徴となる標識並びに経営ノウハウを用いて事業を行う権利を付与することを内容とする契約。
<主な争点>
本件契約の競業避止条項は公序良俗に反するか。
<判断>
(本訴)請求棄却
(反訴)一部認容・一部棄却 【控訴】
フランチャイズ契約の意義から同契約の競業避止規定が無効(民法90条)となる以下の判断基準を示した。
競業避止規定は、
➀同規定の制限の範囲
(禁止対象の期間、地域・場所、営業の種類と制限目的との関係の合理性)
➁同規定の実効性を担保するための手段の有無・態様
(違約金・損害賠償の予定等)、
➂競業に至った背景
(契約終了原因に対する帰責の有無)
等を総合的に考慮し、競業禁止により保護されるフランチャイザーの利益が、
競業禁止によって被る旧フランチャイジーの不利益と対比し、社会通念上是認しがたい場合には無効。
本件において、
・A社が営業をしている九州は、原告の商業圏ではななかった
・原告がA社に提供した営業ノウハウは秘密性・有用性を欠き、保護の程度がごく僅かであった
・契約終了にいたった原因は原告のフランチャイズの全国展開の頓挫など原告側の事情が多分に寄与していること
などの事情がある。
これらの事情を総合考慮して、競業禁止により保護されるフランチャイザー原告の利益が競業禁止によって被る旧フランチャイジーA社の不利益との対比において社会通念上是認しがたい程度に達しているため公序良俗に違反して無効と判断した。

6、東京地裁平成21年11月18日

<事案>
学習塾のフランチャイズチェーンを経営する会社である原告が、被告らとの間でフランチャイズ契約を締結した。
その後、被告らが学習塾を独立開業したことについて、原告がフランチャイズ契約の競業禁止条項に反すると主張して、違約金条項に基づき、違約金等の支払いを求めた等の事案。
<主な争点>
本件競業禁止条項・違約金条項は公序良俗に反するか。
<判断>
一部認容
競業禁止条項はフランチャイザーのノウハウの保護及び営業利益の確保という正当な目的を持ち、かつ、同条項の違反行為に対する違約金を定めることは目的達成のために必要かつ相当な措置である。
そのため、フランチャイジーが同条項違反時に「月間平均ロイヤリティ×残存期間月数」の違約金を課される旨の規定は、直ちに公序良俗に反しない。
同違約金は損害賠償額の予定と推定されるから、その額は、競業禁止条項が保護するフランチャイザーの利益の損害賠償の性格を有する限りで合理性があり、有効である。
しかし、これを超える部分は合理性を欠き公序良俗に反するため無効。

7、最決平成26年3月31日

<事案>
Yは弁当のチェーンを展開するXとフランチャイズ契約を締結した。
しかし、両者の関係が悪化したことから、XはYに対してフランチャイズ契約更新拒否を通知した。そして、YはXから離脱して、独自に弁当の製造・販売事業を行った。
これに対して、XがYの行為はフランチャイズ契約違反の競業であるとして、Yに対して損害賠償請求した事案。
<主な争点>
Yのフランチャイズ契約の競業禁止条項違反の有無
<判断>
Yの上告棄却
Xの勝訴が確定
総本部からの契約更新拒絶の通知は、有効である。
また、競業禁止規定も有効である。
そして、Yはフランチャイズ契約が完全に切れる前から、新しいブランドで自社のポスターや名札、帽子等を用いて宣伝したり、上記契約更新拒絶の通知後も弁当販売を継続したりしたことは競業禁止規定違反であると認定した。
※参照
ウエストロー・ジャパン

8、フランチャイズ契約終了後の競業禁止義務に関する公正取引委員会の見解

競業禁止規定が独占禁止法2条9項5号で禁止されている優越的地位の濫用に当たる可能性があることを示しています。
これに該当すると、競業禁止規定が無効とされるおそれがありますので、参考にしてみてください。
公正取引委員会 フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について

9、終わりに

今回ご紹介した各判例を読みますと、どのような行為が裁判所によって競業行為と認定されるか、又はそもそも競業禁止規定が有効なのか、その線引きは難しくなっております。
競業禁止規定の有効性については、5の判例(東京地裁平成21年3月9日)の示した基準が参考になるのではないでしょうか。
3の判例(名古屋地裁平成17年1月25日)、4の判例(東京地裁平成17年1月25日)、6の判例(東京地裁平成21年11月18日)も5の判例の示した基準に近い要素を考慮して、競業禁止規定の有効性を判断しているといえそうです。
また、競業禁止規定に反する行為としては、3の判例や7の判例(最決平成26年3月31日)のようにフランチャイザーと同じ事業を行う場合、違反すると判断される傾向にあるように見えます。
今回のまとめが、自社の締結したフランチャイズにおける競業禁止規定の適法性及びそれから生じる訴訟について考える素材としてご活用していただければ幸いでございます。

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