厚労省がガイドライン改定、兼業・副業の促進について
2020/09/08   労務法務, 労働法全般, その他

はじめに

厚生労働省は先月28日、第163回労働政策審議会の資料を公表しました。そのなかに副業・兼業促進ガイドラインの改定案が含まれております。今回は厚労省が促進する副業・兼業について見ていきます。

副業・兼業の現状

 厚労省の発表によりますと、労働者全体に占める副業希望者の数は1992年では4.4%のところ、2012年では5.7%と増加傾向にあります。その理由は主にスキルアップ、資格の活用、十分な収入の確保などと言われております。そしてその業態もパート、アルバイト、正社員と様々とされます。しかし一方で実際にはほとんどの企業で兼業または副業は認めておらず、容認または推進している企業は15%にも満たないとされております。その主な理由は情報漏えいのリスクや競業・利益相反、そして自社での業務がおろそかになる恐れだと言われております。

副業・兼業に関する裁判例

 上記のように大半の企業では就業規則等で副業・兼業を禁止しておりますが、それに反して副業を行った場合どうなるのでしょうか。運送会社の従業員がアルバイトの許可申請を理由なく拒否された事例で裁判所は、労働者の勤務時間以外の時間については原則として労働者の自由であり、他の会社での就労も許されるべきとし、兼業によって使用者への労務提供が困難になる、秘密が漏洩する、経営秩序を乱すといった場合には例外的に禁止が許されるとしております(京都地裁平成24年7月13日)。つまり会社に特別の支障を来さないのであれば、副業・兼業は原則労働者の自由ということです。一方で毎日深夜6時間におよぶ風俗店でのアルバイトは社会通念上会社への労務提供に支障を来す可能性が高いとして解雇を有効としております(東京地裁昭和57年11月19日)。また競業他社の重要な役職に就任したことに対してなされた懲戒解雇は有効としております(名古屋地裁昭和47年4月28日)。

副業・兼業に関する法規制

 労働基準法では労働者の労働時間について厳格な規制が置かれており、原則として1日に8時間、週に40時間(32条)、これを超える場合は労使協定が必要となりまた割増賃金も発生します(36条、37条)。この「労働時間」は事業場が異なっても通算するとされており(38条)、それは副業や兼業も含まれるとされております。たとえばA社で5時間労働し、その後B社で4時間労働した場合、合計9時間で法定時間外労働が1時間生じるとされております。そしてその1時間分の割増賃金はB社が支払うこととなります。そしてガイドラインによりますと、この他の会社の分も含めた労働時間の把握は労働者からの申告によればよいとされております。また副業・兼業を推奨する場合は労働者の健康管理や安全配慮において、副業先も考慮に入れるのが適当とされております。

企業側の注意点

 企業側が従業員に副業・兼業を認めるに際しては、①どのような形態の副業を認めるか、②副業を行う際の手続、③副業の状況把握のための仕組み、④副業の内容を変更する場合の手続などについて労使で検討すべきとされております。また労働者側から副業の申し出があった場合には競業に当たらないか、就業時間や業務量はどれくらいになるかなどを確認します。その際労働者に対し必要以上に情報を求めないよう留意すべきとされます。なお副業・兼業による収入が20万円を超える場合には企業による年末調整ではなく労働者個人による確定申告も必要となってきます。

コメント

 従来厚労省が公表していたモデル就業規則では許可なく他の会社等の業務に従事しない旨の規定が置かれておりました。しかし平成30年1月の改定で、副業・兼業は原則として可能となり、その際には会社に届け出、秘密漏洩や競業、会社の業務に支障を来す場合には例外的に禁止または制限できるとの規定に変わっております。以上のように厚労省は現在労働者の副業・兼業を積極的に推進しております。労働者の収入増加やスキルアップだけでなく企業側にも人材流出の防止や競争力の拡大、社外からの人脈の拡大などが見込まれるとしております。新型コロナウイルスの拡大による業務縮小、収入減少などにより副業を希望する労働者は今後も増加することが予想されます。今のうちに就業規則などを見直し、従業員の副業等について検討しておくことも重要と言えるでしょう。

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