名阪電機が社員の過労認め成立、和解とは
2020/09/25   訴訟対応, 民法・商法, 民事訴訟法, その他

はじめに

名古屋市の電気設備会社「名阪電機」の社員であった男性(37)の自殺をめぐり、同社にたいして男性の遺族が計約1億円の損害賠償を求めていた訴訟で15日、和解が成立していたことがわかりました。会社側は過労を認めているとのことです。今回は和解について見ていきます。

事案の概要

 報道などによりますと、名阪電機に勤めていた男性は2016年10月に未経験のプログラム作成を任され、それによりうつ病を発症し同年12月に会社内で手すりにケーブルをかけ首をつって自殺したとされます。名古屋南労働基準監督署は発症前1ヶ月の時間外労働を約120時間と算定し男性の自殺を労災と認定したとのことです。男性の遺族は同社と社長ら3人に対し計約1億円の損害賠償を求め2018年9月に名古屋地裁に提訴しておりました。

民法上の和解

 和解は裁判上の和解と裁判外の和解にわけられます。裁判外の和解は私法上の和解や民法上の和解とも呼ばれ民法に規定される典型契約の1つとなっております。民法695条によりますと、和解とは「当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約すること」とされております。つまり紛争当事者が互いに譲り合うことが要件となっております。なお類似する概念として「示談」というものがありますが、示談は一方だけが譲歩する場合もあり、その点で和解とは異なるものと言えます。和解が成立すると争いがあった法律関係はその内容で確定し、仮に実際には真実に反していたとしてももはや争うことはできません(696条)。

裁判上の和解

 和解には上でも触れたように裁判上の和解というものがあります。これは裁判所が関与する和解のことで、これが成立した際には和解の内容が和解調書に記載され、確定判決と同一の効力が発生します(民事訴訟法267条)。つまり民法上の和解と違い、当事者がその内容を履行しない場合にはそれによって即強制執行を行うこともできるということです。裁判上の和解は訴え提起前にも行うことができます。この訴え提起前の和解は即決和解とも言い民法上の和解に強制力をもたせるために利用されます(275条)。訴え提起前の和解は両当事者がこの制度を利用することを書面で合意し簡易裁判所に申し立てます。その後裁判所に出頭して和解条項の合意をして和解調書が作成されることとなります。公正証書による和解と異なり金銭債務以外にも強制力をもたせられる点に利点があるとされます。

和解と錯誤

 上記のように和解は一度成立するとその確定力によって原則的にその内容を覆すことはできません。しかし例外的に和解の対象とされた事項の当然の前提として当事者間に疑いの無かった事実や、争いの対象外で和解の内容として給付されたものに欠陥があった場合などは民法の錯誤の規定(95条)が適用されると言われております。実際にあった例としては、和解の内容として一定量のジャム缶を代物弁済するとされたところ、ジャム缶の品質が粗悪であった場合や代物弁済として債権が譲渡されたところ債権自体が無効であった場合などです。こういった場合には和解を取り消すことが可能です。

コメント

 本件で名阪電機は自殺した男性従業員に過重労働があったことを認め慰謝料を含む賠償金を支払う内容で和解が成立したとされております。具体的な賠償額は明らかではありませんが、和解であることから原告側にも一定の譲歩があったと考えられます。また裁判上の和解であることから確定判決と同様の効力があり、不履行があった場合にはこれにより強制執行に移行することも可能です。以上のように和解はお互いに譲り合って紛争を終わりにするという一種の契約と言えます。判決が出るまで争うよりも穏当な解決手段と言え、その後の関係修復もよりスムーズなものとなると言えます。自社の従業員や取引先、顧客などと紛争になった場合には和解を検討することも重要と言えるでしょう。

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