旅館無断キャンセルで賠償命令、自白と欠席判決について
2020/09/28   訴訟対応, 民事訴訟法, その他

はじめに

栃木県那須塩原市などの温泉旅館8軒で宿泊予約を無断キャンセルしたとして千葉県柏市のスナック経営者ら3人に損害賠償を求めていた訴訟で23日、宇都宮地裁は被告男性1人に244万円、別の男性1人に34万円の賠償を命じました。2人は口頭弁論を欠席し自白が成立していたとのことです。今回は自白と欠席判決についてみていきます。

事案の概要

 報道などによりますと、柏市内でスナックを経営する女性は男性従業員2人に慰安旅行の計画を指示し、2人は昨年8月から11月にかけて那須塩原市などの温泉旅館8軒に予約を入れたとされます。しかし予約した1月に実際には利用せず無断キャンセルしたとのことです。被害にあった8軒の旅館は女性経営者らを相手取り、キャンセル料など含め約280万円の損害賠償を求め宇都宮地裁に提訴しました。原告側は共同不法行為や使用者責任、契約に基づく債務不履行などを主張していたとされます。

民事訴訟の自白とは

 民事訴訟では自白という概念が存在します。ここに言う自白とは、口頭弁論期日または争点整理手続期日における相手方の主張する自己にとって不利益な事実を認める旨の陳述とされております。自白が成立すると当事者と裁判所を拘束する効果が生じます。まず自白の対象となった事実は証明する必要がなくなり(民事訴訟法179条)、裁判所もその事実については審判することなくそのまま判決の基礎とする必要があります。また自白をした当事者は原則として自白を撤回することができません。例外として相手方が合意している場合や錯誤があった場合、相手に詐欺や脅迫をされて自白した場合などは撤回できるとされております。

自白の対象となる事実

 民事訴訟には主要事実、間接事実、補助事実の3つの事実が存在します。主要事実とは、例えば貸金返還請求訴訟の場合、原告側は金銭の交付と返還合意の2つを立証する必要がありますが、このように法律効果に直接必要な事実を言います。間接事実とは主要事実を間接的に推認するのに役立つ事実を言います。たとえば被告は当時急に金回りがよくなったというような事実です。補助事実とは証拠の証明力に関する事実を言います。証人は普段からよく嘘をつく、被告とは懇意の仲であり信用できないなどといった事実です。これらの事実のうち自白が適用されるのは主要事実だけと言われております。

擬制自白と欠席判決

 自白は裁判所で積極的に認める旨の陳述をしなくても成立することがあります。相手方の主張する事実に対して争う姿勢をみせずに放置した場合に自白したとみなされることがあります(159条1項)。これは口頭弁論期日に欠席した場合も同様です(同3項)。被告が最初の口頭弁論期日に出席せず、答弁書なども提出しない場合は原告の主張を全面的に認め争わない意思であるとみなされることとなります。裁判所としてはもはや審理すべき事項もなく、判決をするのに熟したとして原告勝訴判決を出すこととなります(243条1項)。これをいわゆる欠席判決と言います。この場合は原告が求める判決がそのまま出されてしまうこととなります。

コメント

 本件で実際に温泉旅館に宿泊予約をしたとされる男性従業員2人は口頭弁論に出席しておりませんでした。宇都宮地裁はこの2人が「訴訟の原因となった事実を自白した」と認定し1人に244万円、もう1人に34万円の支払いを命じました。口頭弁論を欠席したことにより原告側の主張を争う姿勢をみせず擬制自白が成立し、そのまま欠席判決となったものと考えられます。以上のように民事訴訟の手続では様々な事実が主張されそれに対し争っていくこととなります。発言や態度によっては自白となることもあり、欠席した場合には自白したものとされ原告の請求がそのまま判決となることがあります。紛争が生じた場合は、たとえ自社に非があると認めている場合でも放置せず主張すべきことは主張していくことが重要と言えるでしょう。

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